あいうべ体操のやり方と回数|子どもは毎食後10回・1日30回が目安
あいうべ体操は「あー」「いー」「うー」「べー」と口と舌を順に大きく動かす口の体操で、当院では毎食後に10回、1日で合計30回を目安にお伝えしています。4つの動きで1セットなので1回分は数秒で終わり、道具も要らないため、今日の夕食のあとからでも家で始められます。歯科でこの体操を勧めるねらいは、唇を閉じておく力と舌を上あごに持ち上げておく力をつけることにあります。続けても口が開いたままのときや鼻づまりがあるときは、回数を増やすより先に原因を確かめたほうが、家での練習が無駄になりません。
あいうべ体操は福岡の内科医が考案した口と舌を大きく動かす体操です
あいうべ体操は、福岡市にあるみらいクリニックの今井一彰院長(内科医)が考案した体操で、口を大きく開け閉めしたあとに舌を思いきり出す4つの動作を順にくり返します。考案者の説明では、口で息をする癖を鼻で息をする形に変えていくことを目的としており、道具が要らず場所も選ばないことから、子どもから高齢の方まで幅広く取り入れられています。唇を閉じる筋肉と舌の筋肉を毎日動かす時間を家の生活の中で無理なく作れるので、歯科でもこの体操をお伝えしています。食事のあとに洗面所で10回だけ行う形なら、保護者の方がそばで見ていられる短い時間の中で終わります。
考案者は、アレルギーやインフルエンザ、風邪、免疫の働きなど全身の病気と口呼吸との関わりについても発信していますが、日本歯科医学会の子どもの口の機能についての資料には、そうした病気への効果は書かれていません。歯科の立場からは、お口の健康を保つ毎日の習慣の中で、唇と舌を動かす練習の1つとして取り入れるのが無理のない使い方で、体調の変化より、口が閉じている時間や舌の動き方を見ていくほうが続ける目安になります。4つの動きでそれぞれ主にどこが動くかは、表1のとおりです。
| 動き | 口の形 | 主に動く所 |
|---|---|---|
| あー | 口を縦に大きく開けた形 | あごを開く筋肉と口のまわりの筋肉 |
| いー | 口角を横に強く引いた形 | 頬と口角の筋肉 |
| うー | 唇をすぼめて前に突き出した形 | 唇を閉じる筋肉(口輪筋) |
| べー | 舌を下あごの先へ伸ばした形 | 舌の筋肉 |
やり方は「あー」「いー」「うー」「べー」を1つずつ大げさに動かして4つで1セットです
あいうべ体操のやり方は、4つの動きを話すときよりずっと大きく1つずつ行い、4つそろって1セットと数えます。考案者の説明では声は出しても出さなくてもよいとされているので、夜遅い時間や集合住宅で声が気になるときは、口の形だけで行えば問題ありません。「あー」はのどの奥が見えるくらい、「いー」は口角を耳のほうへ引くくらいを目安に、話すときより大きく動かしてください。小さいお子さんは鏡の前で保護者の方の顔をまねるほうが形をつかみやすいので、最初の数日は向かい合って、同じ速さで動いてみてください。
- 背すじを伸ばしていすに座り、足の裏を床につけて口を閉じます
- 「あー」で口を縦に大きく開け、1秒ほどその形を保ちます
- 「いー」で口角を横に強く引き、上下の歯が見えるくらい広げます
- 「うー」で唇をすぼめ、とがらせるように前へ突き出します
- 「べー」で舌を下あごの先に向けて、できるだけ長く出します
図1 あいうべ体操1セットの進め方

4つのうちでいちばん難しいのは「べー」で、舌を前に出すだけで先が下を向かない子や、舌が平たいまま唇の上に乗るだけの子もよくいます。鏡を見ながら「あごの先をなめるつもりで」と声をかけると、舌の先がとがって下に伸びる形をつかみやすくなります。舌を出したときに先がハートのような形にくびれる、舌を前に突き出すこと自体が難しいといった様子がある場合は、舌の裏のひも(舌小帯)の状態が関係していることもあります。その場合は体操を続ける前に、歯科で舌の動きを見てもらってください。
回数は毎食後10回ずつの1日30回が目安で小さい子は少ない回数から始めます
当院では、あいうべ体操を毎食後に10回ずつ、1日で合計30回を目安に続けていただくようお伝えしています。食事のあとで区切ると、朝・昼・夜の3回で合計が30回に届くので、今日はもう済んだかどうかを数え忘れることも少なくなります。一度に30回まとめて行うと大人でも頬やあごがだるくなるほど疲れるため、子どもに続けてさせると、それだけで体操そのものを嫌がる原因になりがちです。園や学校があって昼に行えない日は、朝と夜に15回ずつ分けるなど、1日の合計で考えて調整してください。
指示どおりに口を動かせるかどうかや、集中できる時間は年齢でかなり違います。日本歯科医学会の考え方でも、何もしていないときに唇が閉じているかを見るのは乳歯がそろう3歳以降とされているので、口の形をまねて遊べるようになる3歳ごろからが、体操として取り入れやすい時期です。家での始め方は、表2を参考にお子さんの様子に合わせて変えていただけます。
| 年齢 | 始め方の例 | 見てあげたいところ |
|---|---|---|
| 3〜4歳 | 1度に5回ほど、保護者の方の顔をまねて形を覚える | 4つの口の形の違いがはっきり出ているか |
| 5〜6歳 | 毎食後10回、鏡を見ながら自分で数える | 「べー」で舌の先が下に向いているか |
| 小学生 | 1日30回、行う時間を本人と決めて続ける | ふだん自然に口が閉じている時間が増えているか |
回数を数えることに気を取られると、子どもの動きはだんだん小さくなっていきます。10回のうち最初と最後の口の開き方を比べて、最後のほうが小さくなっているようなら、回数を減らしてでも1回ずつの形を大きく保ったほうが、筋肉を使う練習になります。毎日続けることを優先し、疲れている日や機嫌の悪い日は5回で終える日があっても問題ありません。
あいうべ体操で鍛えたいのは唇を閉じる力と舌を上あごにつけておく力です
あいうべ体操で動かす筋肉のうち、歯科で特に見ている力は、唇を閉じておく力と舌を上あごに持ち上げておく力の2つです。日本歯科医学会の考え方では、何もしていないときに唇が開いている状態を口の機能の育ちを見る項目の1つとし、唇を閉じる力は年齢と性別ごとの標準の値と比べて評価します。唇の力が弱いと、テレビや動画に集中しているときに口が開き、そのまま口で息をする時間が長くなりがちです。唇を閉じる力は成長とともに強くなっていくので、身長や体重と同じように、その子の年齢の中で強いか弱いかを見ていきます。
舌は、何もしていないときに先が上の前歯の裏の少し奥(スポットと呼ばれる位置)に触れ、全体が上あごにぴったり収まっているのが本来の位置です。舌が下がって下の前歯の裏に触れている子は、口が開きやすくなります。また、飲み込むときや話すときに舌が前に出る癖は、当院でも歯並びとあわせて見ています。「べー」で舌を長く伸ばす運動は舌の筋肉そのものを使うので、舌を持ち上げておく力をつける練習と組み合わせると、ふだんの舌の位置を見直す助けになります。体操を始めてからの変化は、家での次のような場面で見てあげてください。
おうちで見ておきたい場面
- 動画を見ている間に、上下の唇がすき間なく合わさっているか
- 食事中に口を閉じたまま噛めていて、くちゃくちゃと音を立てていないか
- 眠っている顔をのぞいたときに、口が開いたままになっていないか
- 「べー」をしたときに、舌の先が下あごの先のほうまで届いているか
気になる場面があったら、体操を始めた日と見た日を並べてメモしておくと、受診のときに様子を伝えやすくなります。
あごが痛むときや口を開けると音がするときは「いー」「うー」だけにします
口を大きく開けたときにあごが痛む、カクッと音がするといった様子があるときは、「あー」と「べー」を休み、「いー」と「うー」だけをくり返してください。考案者の説明でも、あごの関節に不安がある人や口を開けると痛む人は、回数を減らすか「いー」「うー」だけを行うようにとされており、この2つはあごの関節に負担がかかりにくい動きです。子どもは痛みをうまく言葉にできないことが多いため、体操の途中で頬を手で押さえる、口を開けるのを途中でやめるといったしぐさが何回も続くときは、その日は無理に続けさせないようにします。痛みが強くなる、口が開けにくくなったといった場合は体操をやめて、歯科であごの状態を見てもらってください。
体操を休んだほうがよい日
- 口内炎や口角の切れがあって、口を動かすと痛がる日
- 抜けかけの乳歯がぐらぐらして、口を大きく開けるのを嫌がる日
- 鼻がつまっていて、口でしか息ができない日
- 歯科で麻酔を使った治療をして、唇や舌のしびれが残っている間
休んだ日は回数を取り戻そうとせず、次の日から1日30回に戻します。熱がある日なども、体操はお休みしてください。
続けるには食後の歯みがきの前など毎日決まってある場面に体操を組み込みます
あいうべ体操を長く続けるには、食後の歯みがきの前のように、毎日決まってある動作に10回をくっつけると続けやすくなります。子どもは「あとでやろうね」と言われた練習ほど忘れやすく、保護者の方が毎回声をかける形のままだと、声をかけるほうが先に疲れて途切れてしまいます。たとえば洗面所の鏡の横に「あ・い・う・べ」の4つの口の形を描いた紙を貼っておくと、歯ブラシを手に取る前に目に入り、子どもが自分から始める合図になります。歯みがきなど毎日のケアと同じ扱いにして、1日のどこに入れるかを表3のように家の習慣に合わせて決めておくと迷いません。
| 場面 | 回数 | 続けやすくする工夫 |
|---|---|---|
| 朝食のあと | 10回 | 歯みがきの前に、洗面所の鏡の前で行う |
| 昼食のあと | 10回 | 園や学校の日は、帰ってからのおやつの前に回す |
| 夕食のあと | 10回 | お風呂の湯船の中で、家族と顔を見せ合いながら行う |
お風呂は顔が近く、声を出しても周りを気にしなくてよいので、家族で一緒に行う場面として向いています。保護者の方が大げさな顔をしてみせると子どもは笑いながらまねをするので、体操が叱られる時間になりにくく、続ける気持ちを保ちやすくなります。できた日にはカレンダーの日付に丸をつけるなど、目に見える形で残してあげると、1週間、2週間と続いた日数が子ども自身の自信になります。
続けても口が開いたままなら鼻の通りと唇の力を歯科で確かめます
体操を続けても口が開いている時間が変わらないときや鼻づまりが続くときは、回数を増やす前に鼻の通りや唇を閉じる力を歯科で確かめてもらってください。日本歯科医学会の考え方では、歯科で唇を閉じる力を測って練習を始めたら3か月ごとに測り直し、伸び方を見て練習を続けるかどうかを決めるとされています。測り直した数値に改善が見られれば、いまの練習がその子に合っていると判断できます。同じ資料では、唇を閉じる筋力を伸ばすことだけに目を向けず、口が開いてしまう姿勢や食生活、全身の発達の様子も含めて評価するよう求めています。口で息をする原因は大きく3つに分けられるので、表4を目安に相談先を選んでください。
| 原因 | 様子の例 | 相談先の目安 |
|---|---|---|
| 鼻の病気によるもの | 鼻づまりや鼻声の症状が長く続いている | 小児科や耳鼻科(鼻づまりの対策を相談) |
| 歯並びによるもの | 前歯が前に出ていて唇が閉じにくい | 歯科(矯正のご相談は無料です) |
| 癖によるもの | 鼻は通っているのに口が開いている | 歯科で唇と舌の練習 |
口で息をすることが多く鼻の病気が疑われるときは、歯科から小児科や耳鼻科を紹介するのが基本の流れなので、鼻づまりが続く子はかかりつけの小児科の先生にもあわせて相談してください。当院の小児予防診療では、りっぷるくんという機器で唇を閉じる力を測り、その結果をデジタルの数値でお見せしています。正しい飲み込み方や発音につながる舌の使い方の練習も行い、食事の仕方や姿勢についてもご説明しています。測った数値は、患者さんである子ども本人にとっても、練習を続ける励みになります。必要に応じて耳鼻科や言語聴覚士などと連携します。食べる機能や話す機能の育ちに遅れがあり、口腔機能発達不全症と診断された場合の保険のしくみは、お口ポカンの保険適用の条件で詳しくご説明しています。
口腔機能発達不全症と診断されたときは保険で診られます
- 18歳未満のお子さんが対象で、唇を閉じる力などの検査と、家で続ける練習の指導を保険で受けられます
- 診断がつかない場合も、ご相談のうえ自費でトレーニングを行うことができます
※お子さんの状態によっては保険の対象とならないことがあります。検査のうえでご説明します。
よくあるご質問
親や祖父母が一緒にあいうべ体操をしてもよいですか
ご家族で一緒に行っていただけます。あいうべ体操は年齢を問わず行える体操で、高齢の方の口の体操としても紹介されているので、並んで行うと子どもも動きをまねしやすくなります。大人の方も、あごに痛みや音がある場合は「いー」「うー」だけにしてください。
ガムやストローを使う口の練習と組み合わせてもよいですか
組み合わせて行えます。日本歯科医学会の資料では、丸めたガムを舌で上あごのスポットに押し当てる練習や、唇でストローなどをはさんで保つ練習が例として挙げられています。どの練習をどのくらい行うかは唇や舌の力によって変わるので、歯科で力を測ったうえで、お子さんに合う組み合わせをお伝えします。
口の機能が気になるときは何歳ごろに歯科へ相談すればよいですか
2歳ごろでも、いつも口がぽかんと開いている、よく噛まずに食べるといった様子に気づいた時点でご相談いただけます。当院では、4〜5歳で口の機能の低下がみられる場合は、口腔筋機能療法(MFT)を行うことも検討します。
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お子さんのお口のこと、まずはご相談ください
治療をするかどうかは、お話を聞いてから一緒に決めます。診察台に座らなくても大丈夫です。
このページは、お子さんのお口の育ちについて一般的な情報をご紹介するものです。お口の状態や育ちには個人差があり、書かれていることがすべてのお子さんに当てはまるわけではありません。気になる点がありましたら、歯科医師にご相談ください。
オーク歯科クリニック(北海道釧路市昭和中央4丁目18-1 イオンモール釧路昭和店1F)


