お口ポカンの保険適用は診断が条件|口腔機能発達不全症の基準と費用
お口ポカンを保険で診てもらえるかどうかは、歯科で口腔機能発達不全症という病名がつくかで決まり、病名がつけば検査や練習の指導に健康保険が使えます。ただ、口が開いていることだけでは診断の基準に届かず、噛む機能の項目にも当てはまるものがあることが条件になります。釧路市にお住まいで18歳になった年度末までのお子さんなら、子ども医療費助成によって保険診療の窓口での負担はかかりません。歯並びを整える矯正装置は保険の外になるので、どこまでが保険で、どこからが自費かを先に知っておくと、受診するかどうかを決めやすくなります。
お口ポカンが保険適用になるのは口腔機能発達不全症という病名がついたときです
2018年の診療報酬の改定で口腔機能発達不全症という病名が歯科の保険に入り、現在は18歳未満の子どもの食べる機能と話す機能の育ちを、歯科医院で継続して管理してもらえます。むし歯のように穴があいたり痛んだりといった症状が出ないため、ご家庭では「癖だから」と様子を見たまま過ぎてしまうことが少なくありません。日本歯科医学会はこの病名を、食べる機能と話す機能などが十分に発達していないか、正しく身についておらず、ほかに明らかな原因の疾患がない状態と定めています。口が開いているという見た目の悩みも、この中では話す機能の「唇の閉鎖不全」という項目として扱われるので、歯科では歯だけでなく食べ方や呼吸の様子もあわせて見ていきます。
日本小児歯科学会が2026年1月に出したお知らせでも、近年は生活様式や食生活の変化によって、お口の機能の発達が遅れたり、合わない使い方が習慣になったりする子どもが増加傾向にあると説明されています。硬いものを食べない、食べるのが極端に早いか遅い、発音がはっきりしない、口呼吸やいびきがあるといった様子が、その例として挙げられています。お口ポカンを相談するときは、口が開いていることに加えて、こうした食事や会話のときの様子も伝えていただくと、診察のときに参考になります。お口ポカンにかかわる言葉と保険との関係は、表1のとおりです。
| 言葉 | 意味 | 保険との関係 |
|---|---|---|
| お口ポカン | ふだん唇が閉じず、口が開いている様子を指す呼び方 | ふだんの呼び方で、病名には含まれません |
| 口唇閉鎖不全 | 何もしていないときに唇が閉じていない状態 | 診断のチェック項目のひとつ(話す機能) |
| 口呼吸 | 鼻の代わりに口で息をしている状態 | チェック項目のひとつ(その他の機能) |
| 口腔機能発達不全症 | 食べる・話す機能の育ちに遅れや偏りがある状態の病名 | 診断されると保険で管理を受けられます |
| MFT(口腔筋機能療法) | 舌や唇など口まわりの筋肉の使い方の練習 | 診断があれば保険の管理の中で行えます |
診断には唇が閉じないことに加えて噛む機能の項目を含む2つ以上の当てはまりが必要です
日本歯科医学会の基準では、食べる機能と話す機能のチェック項目のうち2つ以上に該当し、そのうち1つが噛む機能(咀嚼)の項目であることが、離乳が終わった子の診断の条件です。お口ポカンは話す機能の「唇の閉鎖不全」という1項目なので、それだけでは条件に届きません。たとえば、口がいつも開いているうえに、食べ物を口に入れてから飲み込むまでにおおむね1分以上かかる場合は、噛む機能の「咀嚼の時間が長すぎる」と合わせて2つになります。いびきや口呼吸は「その他」の項目として記録されますが、診断に必要な2つには数えないので、食事のときの様子をよく見ておくことが判断の助けになります。
| 分類 | 主なチェック項目 | 見る時期の目安 |
|---|---|---|
| 食べる(噛む) | 歯の生える時期の遅れ、口の癖などが原因の歯並び・かみ合わせの異常(出っ歯や受け口など)、噛むのに影響するむし歯、強く噛みしめられない、噛む時間が長すぎるか短すぎる、左右どちらかばかりで噛む | 項目によって1歳半以降か3歳以降 |
| 食べる(飲み込む=嚥下・食べ方) | 飲み込むときに舌が前歯の間から出る、食べる量や回数のムラが大きい | 1歳半以降 |
| 話す | 発音の置き換えやゆがみ(構音障害)と唇の閉鎖不全、指しゃぶりなどの口の癖(口腔習癖)と舌の裏のひも(舌小帯)の異常 | 唇と口の癖は3歳以降、発音は5歳以降 |
| その他 | やせや肥満と口呼吸、扁桃の肥大と睡眠中のいびき、舌の力の低下 | 診断に必要な2つには数えない項目 |
表2の右の列のとおり、項目ごとに評価を始める年齢が決まっていて、唇の閉鎖不全は乳歯が生えそろう3歳ごろから、発音は5歳ごろから見ることになっています。2歳のお子さんの口が開いていても、その時期はまだ唇の項目で判断する段階ではなく、食べ方や姿勢、鼻の通りを整えながら成長の経過を観察していきます。反対に、小学生になっても口が開いたままで、食べこぼしや発音の気になるところが重なっている場合は、いくつかの項目に当てはまっている可能性があります。年齢によって見るところが違うので、気になるサインがあれば早めに一度受診して、今どの段階にいるかを確かめてもらうのが早道です。
保険で受けられるのは検査と指導と練習までで歯並びを整える矯正装置は自費です
保険の管理では、月1回ほどの通院で食べ方と姿勢の指導や口まわりの筋肉の練習(MFT)を受けられ、唇を閉じる力や舌の力の検査はおおむね3か月ごとに行います。日本小児歯科学会は、口腔機能発達不全症の治療と歯並びの矯正は別のもので、矯正装置を使って歯を並べる治療は保険の対象に含まれないと説明しています。お口の機能が整うことで歯並びに良い影響が出る場合もありますが、この治療の目的は食べる・話す機能を育てることにあり、歯並びそのものは目的に入っていません。学会は、食べ方や話し方が気になるときは先に機能へのはたらきかけを行い、矯正を検討するのはその様子を見てからでも遅くないとしています。
| 内容 | 保険か自費か | 当院での扱い |
|---|---|---|
| 口腔機能発達不全症の検査・説明・練習の指導 | 保険(診断の基準に当てはまる場合) | 18歳未満のお子さんに月1回の管理を行い、検査はおおむね3か月ごとです |
| 基準には届かないけれど気になる場合の練習 | 自費 | ご相談のうえで、自費のトレーニングを行うことができます |
| むし歯や歯ぐきの検査と治療 | 保険 | 噛むのに影響するむし歯はチェック項目のひとつにも入ります。治療とあわせて、歯みがきなど口腔衛生の指導も行います |
| 歯並びを整える矯正装置 | 自費(国が定めた病気などにかかわる一部の矯正を除く) | 矯正のご相談は無料で、装置の費用は矯正の費用一覧のページに載せています |
口腔機能発達不全症は保険で診られます
- 対象は18歳未満のお子さんで、保険で対応できます
- 練習の状況の確認は月1回、唇や舌の力の検査はおおむね3か月ごとです
- 家で続ける練習(MFT)のやり方と回数をお伝えします
※お子さんの状態によっては保険の対象とならないことがあります。検査のうえでご説明します。
釧路市に住む18歳の年度末までの子どもは保険診療の窓口負担が子ども医療費助成でかかりません
釧路市の子ども医療費助成は、0歳から18歳になった日以後の最初の3月31日までのお子さんが対象で、所得制限がなく、歯科を含む保険診療の自己負担はありません(2026年10月時点)。健康保険では、小学校に入る前の子どもは医療費の2割、入学後は3割を窓口で支払う決まりになっていて、その自己負担分を市の子ども医療費助成制度で補う仕組みです。受給者証は毎年8月1日に自動で更新され、北海道内の医療機関で使えます。道外の医療機関で受診したときは、いったん自己負担分を支払って、後から市に払い戻しを申請する流れになります。診察の結果、診断の基準に届かず保険の外の練習になったときは、その費用に助成は使えません。
| 診療の種類 | 健康保険の自己負担 | 釧路市の子ども医療費助成を使うと |
|---|---|---|
| 口腔機能発達不全症の検査と管理(保険) | 小学校入学前は2割、入学後は3割 | 窓口での負担なし |
| むし歯の治療(保険) | 小学校入学前は2割、入学後は3割 | 窓口での負担なし |
| 基準に届かないときの練習や矯正装置(自費) | 健康保険が使えないので全額 | 助成の対象外 |
助成は健康保険が使える診療の自己負担に対するものなので、表4のいちばん下の行のような自費の診療には使えません。お口ポカンの相談で受診して、診断の基準に当てはまれば保険、当てはまらなければ自費の練習という分かれ方になるため、診察を受けた日に、どちらになるのかを遠慮なくお尋ねください。釧路市以外にお住まいの方は、市町村ごとに対象の年齢や負担のある・なしが違うので、お住まいの市町村の子ども医療費助成の決まりに沿って窓口の負担が決まります。
保険での通院は月1回ほどで検査と練習の確認をくり返し3か月ごとに効果を見直します
保険での管理は、生活の聞き取り、お口の診察と測定、診断と説明、管理計画に沿った月1回ほどの通院という流れで進み、日本小児歯科学会は練習の期間を最長で1年としています。口まわりの筋肉の使い方は家での毎日の練習で少しずつ身についていくので、通院は月1回ほどの間隔になります。日本歯科医学会の考え方では、唇の練習は3か月続けたところで測り直し、改善が見られないときや年齢の目安に届かないときは、もう3か月継続することになっています。同じ考え方では、初回と少なくとも3か月ごとに、顔貌と口の周りの写真を撮って変化を比べることになっています。図1のような流れを最初に知っておくと、何回目の通院で何を見るのかが分かり、お子さんにも先の見通しを話しやすくなります。
- お話を伺う:食事にかかる時間、口が開いている時間帯、いびきや寝相などの生活の様子をお聞きします
- 診察と測定:歯並びと噛み合わせ、舌や唇の動きを見て、唇を閉じる力などを測ります
- 診断と説明:チェック項目に当てはまるかどうかと、保険か自費かをお伝えします
- 管理計画:家で続ける練習の内容と回数、次の来院の時期を決めます
- 月1回の通院:練習の様子を確認し、3か月ごとに測り直して計画を調整します
図1 お口ポカンの相談から保険での管理が始まるまでの流れ
練習の中身は、唇を閉じたまま保つ練習や、舌を上あごの正しい位置に押し当てる練習、よく噛んで飲み込む練習などで、どれも日常の生活の中で毎日続けることが前提になります。日本歯科医学会は、口を閉じる筋力だけを鍛えても意味がないとして、舌の力や噛む力とのバランス、安静にしているときに口が開いてしまう姿勢や食生活、全身の発達の状態まで含めて評価するとしています。そのため通院の日には、練習ができたかどうかだけでなく、食事の姿勢や寝ているときの様子もあわせて伺います。測定の数値が目安に届き、唇を閉じる力が保てていると確かめられたら、練習を卒業して定期的な検診で様子を見ていく形に移ります。
当院ではりっぷるくんで唇を閉じる力を測りあいうべ体操などの家での練習をお伝えしています
当院の小児予防診療では、りっぷるくんという専用の機器を使用して唇を閉じる力を測り、結果をデジタルの数値でお見せしています。数字で見えると、前回と比べてどれだけ変わったかがお子さんにも保護者の方にも分かり、家で練習を続ける励みになります。当院では、あいうべ体操を毎食後に10回、1日で合計30回を目安にお伝えしています。食べるときは足の裏を床や台につけて座るなど、食事の環境と姿勢についてもアドバイスしています。鼻づまりが強いときや発音が気になるときは、必要に応じて耳鼻科や言語聴覚士などと連携します。

診断の基準に当てはまらない場合でも、ご相談のうえで自費のトレーニングを行うことができます。受診の前に、ふだんの様子を下のチェックで見ておいていただくと、診察の時間を有効に使えます。初診は長くて1時間ほどで、嫌がったり怖がったりしているお子さんに、無理やり検査や処置を行うことはありません。
受診の前におうちで見ておきたいサイン
- テレビや動画を見ているときや勉強中に唇が開いていないか
- ひと口を飲み込むまでにかかる時間と、飲み物で流し込んでいないか
- 左右どちらかばかりで噛んでいないか、年齢に合った硬さの食べ物を嫌がらないか
- サ行やタ行が聞き取りにくいなど、発音に問題がないか
- 寝ているときにいびきをかくか、口を開けて寝ているか
当てはまるものは、日付を添えてメモしておくと受診のときに役立ちます。口を閉じることを意識させようと何度も注意するより、気づいたことを記録しておくほうが診察の材料になります。食事の様子は家の中でしか分からないので、スマートフォンで食べているところを短く撮っておくと、噛み方や飲み込み方を歯科医師が具体的に見られます。チェックに当てはまらなくても、口が開いていることが心配であれば、相談だけの受診でもかまいません。
よくあるご質問
学校の歯科健診の結果に口唇閉鎖不全と書かれていました
健診の用紙をお持ちいただければ、指摘された内容をもとにお口の機能を拝見し、チェック項目に当てはまるかどうかをお伝えします。学校の健診は短い時間で多くのお子さんを見るので、指摘があったときは歯科医院で改めて詳しく見てもらってください。
鼻がつまりやすいのですが歯科と耳鼻科のどちらに行けばよいですか
鼻づまりが続いて口で息をすることが多い場合は、歯科でも鼻の疾患が疑われるときは小児科や耳鼻科をご紹介する決まりなので、耳鼻科や小児科を先に受診してください。花粉の時期などに鼻づまりが強くなるお子さんも同じです。アデノイドや扁桃が大きいといった原因がある場合は、そちらの治療を進めながら、お口の機能の練習をあわせて行うこともあります。
歯並びも気になるときは矯正の相談を同じ日にできますか
お口ポカンの相談の際に、歯並びについてもあわせてお聞きください。矯正のご相談は無料です。お口の機能の練習と矯正のどちらから始めるかは、お子さんの年齢と噛み合わせの状態を見てご説明します。
あわせて読みたい
お子さんのお口のこと、まずはご相談ください
治療をするかどうかは、お話を聞いてから一緒に決めます。診察台に座らなくても大丈夫です。
このページは、お子さんのお口の育ちについて一般的な情報をご紹介するものです。お口の状態や育ちには個人差があり、書かれていることがすべてのお子さんに当てはまるわけではありません。気になる点がありましたら、歯科医師にご相談ください。
オーク歯科クリニック(北海道釧路市昭和中央4丁目18-1 イオンモール釧路昭和店1F)


